インフレーションと経済成長 〜 注66

公開: 2024年2月26日

更新: 2024年2月26日

注66. 米国における長期金利の低下と円高

2023年後半から米国連邦通貨準備委員会(FRB)は、従来からの低い長期金利政策を変更し、インフレーションを止めるために、高めの長期金利を設定しています。これによって、米国の平均株価は、以前よりも落ち着いた動きになっています。しかし、米国労働市場における平均賃金の高騰は、2024年になっても続いています。

FRBは、高い長期金利が米国経済の停滞を招くことを警戒して、インフレーションに歯止めをかける目的での長期金利の上昇を見送っています。このことから、ニューヨーク証券取引所では、今後も高い株価は続くとの予想が支配的になり、史上最高値である平均株価、39,000ドルを維持しています。この状態が続けば、近い将来、平均株価は、40,000ドルを超えると予想されています。

その意味では、FRBのインフレーションに対する警戒感は、消失したわけではありません。ニューヨーク証券取引所での平均株価が上昇し続ければ、米国社会における物価上昇への警戒感は膨れ上がるので、米国社会における物価の鎮静化を期待する声が高まり、長期金利を高める政策に戻らざるを得なくなるでしょう。逆に、物価高騰への予測が弱まれば、通常の長期金利に戻すことが可能になります。

米国における長期金利が通常の状態に近づけば、日本の長期金利と米国の長期金利の差が縮まるため、円とドルとの為替レートは、円安に歯止めがかかり、ドル安方向に動き始めます。2023年からの国際為替市場における1ドル140円以上の円ドル為替レートは、異常な円安と言えます。この異常な状態は、日本銀行が長期金利を正常化するか、米国FRBがインフレーション抑止のための金利利下げを決定すれば、是正されるでしょう。

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